アンテナ設置工事時にしっておきたいブースターの役割「電波の減衰・損失」について

一般家庭用アンテナ受信設備

こんにちは。棟梁ドットコム 施工チームの出島です。
今回はアンテナの設置工事時によく聞かれる「ブースターって何?」、「ブースターって必要?」という疑問ついて解説します。

減衰と損失

電波の強度はケーブル内や分配器やテレビ端子などの機器を通過する際、弱まる性質を持っています。
ケーブル伝送によって弱まることを減衰、機器通過によって弱まることを損失といい、数値はともに 【dB】で表します。

同軸ケーブル通過による減衰

新築の建物は、ほぼ100パーセント【S-5C-FB】と呼ばれる同軸ケーブルを配線しています。
同ケーブルの減衰量は以下の数値となります。
周波数帯域が高いほど減衰量が大きくなる性質があるため、地デジより衛星放送 (BS/CS ※4K8K放送含む)の方がより減衰量が大きくなっています。

同軸ケーブル (S-5C-FB)の減衰

アンテナから分配器まで配線長15m、分配器からテレビ端子まで長いところで15mとすると、地上デジタル放送で 30m × 170 dB / 1,000m =  5.1dB などとなります。

分配器の通過損失

分配器は、アンテナからの電波を各部屋のテレビ端子に送るための機器です。
2分配~8分配までありますが、一般家庭では5分配か6分配が主流です。
通過損失は分配数が多いほど大きく、周波数帯域が高いほど大きくなります。
分配損失の数値は以下です。

分配器の分配損失

「うちでは2箇所でしかテレビを観ないので、ブースターはいらないのでは?」と仰るかたがいらっしゃいますが、テレビ端子の数で既に分配されているため、テレビの数は関係ありません。

テレビ端子での出力強度

テレビ端子でもわずかですが(0.2~0.5dB)損失 (挿入損失)が生じます。

テレビ端子での出力の強度ですが、推薦値は地デジで50~81dB、衛星放送で51~81dBと言われております。
棟梁ドットコムでは部屋内での分配や複数接続等も考慮に入れ、ともに65dB~80dBくらいを目安に調整しております。

レベル計算

【レベル計算例】 配線長30mで6分配器使用 アンテナ設置位置の電界強度は 63 dB、BS/CS放送は78 dB

ブースター設置なしの場合、テレビ端子では地デジで46.7dB、BS/CSで46.2dBとなってしまいます。
目安の65~80dBにするには、最低でも地デジで18.3dB、BS/CSで18.8dB増幅する必要があります。

地デジ視聴希望、6分配器が設置され、配線長が一箇所分30mの建物で、テレビ端子の出力を65dB以上にするには、ブースターを使用しない場合、アンテナで最低でも81.3dBの強度が必要となります(81.3  ー  5.1  ー  11.0  ー  0.2   =  65 )。

地デジ用アンテナですが、最近は八木アンテナより外観を重視したデザインアンテナが好まれ、性能も八木アンテナと大差ありません。
ただし、設置環境において八木アンテナは高い空間に設置するのに対し、デザインアンテナは壁面などで、八木と比較すると低くなり、方向調整等も十分にできない欠点があります。この設置環境の違いで強度に決定的な差が生じます。

5分配、6分配器のお宅でデザインアンテナを設置する場合、余程の強電界地域でない限りブースターが必要です。

衛星放送の電波の強度は、地デジと性質が異なり電波方向に物理的障害物がなければ全国どこでも大差なく、パラボラアンテナで75dB~85dB程度です。
高い周波数帯域で、電波がより弱まりやすい性質があるため、5分配、6分配のお宅ではブースター設置は必須となります。

ブースターの役割

受信する電波は、測定器を用いその強度と質 (クオリティ)の2つの軸で評価します。

強度は単位【dBμV/m】で表し、クオリティーはBER(ビット・エラー・レイト)値 、MER(モジュレーション・エラー・レシオ)値でそれぞれ確認します。
最大の強度を得られる方向、高さをアンテナで確認し、併せてBER値、MER値に問題がないかを確認します。

ブースターは、2つの評価軸のうち強度の確保のために使用する機器です。

一般的に電波を強める機器と認識されています。間違いではないのですが、実際は電波の減衰や損失を補うための機器というのが適切な表現かと思います。

アンテナで受信した電波は同軸ケーブル、分配器などを通過するごとに弱まってしまいます。テレビに接続するまでに、数値が弱まり視聴できなくなることを防ぐためにブースターを設置するわけです。ブースターは増幅するだけではなく、理想の強度に調整するための入力アッテネーターや利得調整の機能があります。

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